檜皮色

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唐塗の上げの色に呂上(ろあげ)赤上(あかあげ)青上(あおあげ)の他に檜皮上(ひわだあげ)というのがあった。昔はたまに塗ったものだったが、最近はまず見なくなった。
昔、青森市新町に「津軽物産販売所」というお店があって、田中屋工房でできた津軽塗を扱っていた。そこには大嶋さんという上品で白髪の女主人がいて着物姿で店頭に立っていた。大嶋さんが檜皮色が好きだと言ったのを聞いたことがある。村上善男先生は「民芸の朱」と表現したことがあった。
落ち着いたいい色合いだと思うが、見かけなくなった。伝統工芸の色にも結構流行り廃りがある。

紋紗塗角盆(30×30cm 32,400円)

女子大生が取材に来た

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弘前大学の女子大生が店を取材に来た。それも4人も。可愛い子ばかりである。弘前市役所の発行する広報『ひろさき』に掲載されるのだという。オジサンは嬉しい。いや待てよ、彼女たちのお父さんさんよりも私は多分、年上になるか、するとお爺ちゃん?まぁよかろう。
文章を書くのが好きだろうから、津軽塗のレクチャーの途中で逆に質問してみた。本を読むのは好きというお嬢さん方である。山口瞳や山本夏彦はさすがに知らなかった。しかし向田邦子も知らないという。世代が違うから無理もないか。ちなみにこの3人は私の好きなエッセイの名手である。女子大生たちは拙ブログも読んでくれたという。しかもカッコいいと言われた。冥利に尽きる。オジサンは嬉しい。

(画像は田中屋工房津軽塗資料館)

雪の朝

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今朝、雪が積もった。大した積雪ではないが、それでも久しぶりの雪掻きである。
「雪掻き仕事」という言葉がある。確かに店の前を通る人にとっては少しは歩きやすい環境を作り出すが、別に感謝をされるわけではない。むしろ作業中は通行の妨げにすらなる。「褒められもせず、苦にもされず」であろうか。
しかし10時に店を開けるためにはやっておかなければ。幸い倅も手伝ってくれる。感慨に浸っている訳にはいかない。雪国の朝は忙しいのだ。

漆刷毛

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漆を塗る刷毛の毛は女性の髪の毛が使われている。その中でも海女の髪の毛が一番といわれている。海水に晒されて適度に油分が抜けたものが漆の含みがいいといわれている。しかし当然のことながら今では中々手に入らない。
「本通し」と呼ばれる刷毛は鉛筆の芯のように毛が前から後ろまで通っている。だから塗っているときに毛が抜ける心配がない。しかし刷毛を作る職人も少なくなって来ているし、髪の調達も難しくなって来ている。
画像は刷毛が横に並んでいるもの刷毛の収納のために職人が工夫してこしらえた物で、刷毛を洗った時の油切りを兼ねている。職人は手が利くだけに、工房に行くたびに工夫した道具が出来ていたりして、びっくりすことがある。

くるめ鉢

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黒塗りの大きな鉢がある。くるめ鉢といって漆を精製した道具だ。鉢に生漆(きうるし)を入れて天日に当てながら棒で撹拌して水分を蒸発させる。これを「くるめる」という。
この鉢を見てあるお客様が蕎麦を捏ねるのによさそうだと言った。蕎麦打ちが趣味だという。ある女性のお客はこの鉢に色とりどりの毛糸を載せたらきれいなのにと言った。編物が趣味だという。なるほどと思った。人によって見る視点が違うものだ。
(直径66cm 津軽塗資料館に展示中)

からくれない

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「千早ふる神代もきかず竜田川からくれないに水くくるとは」在原業平の名歌だが、落語「千早振る」の方を先に思い出してしまう。
知ったかぶりのご隠居が名歌を珍解釈する話だ。人気大関の「竜田川」が吉原へ遊びに行った際、「千早」という花魁に一目ぼれした。ところが千早は力士が嫌いで振られてしまう(「千早振る」)。振られた竜田川は妹分の「神代」に言い寄るが、こちらも「姐さんが嫌なものは、わちきも嫌でありんす」と、言う事を聞かない(「神代も聞かず竜田川」)。
このことから成績不振となった竜田川は力士を廃業、実家に戻って家業の豆腐屋を継いだ。それから数年後、竜田川の店に一人の女乞食が訪れる。「おからを分けてくれ」と言われ、喜んであげようとした竜田川だったが、なんとその乞食は零落した千早太夫の成れの果てだった。激怒した竜田川はおからを放り出し、千早を思い切り突き飛ばした。千早は井戸のそばに倒れこみ、こうなったのも自分が悪いと井戸に飛び込み入水自殺を遂げた(「から紅(くれない)に水くぐる」)。
ところが聞き手の八五郎は「千早振る、神代も聞かず竜田川、からくれないに水くぐる、まではわかりましたが、最後の『とは』は何です」と突っ込んだ。とっさの機転でご隠居はこう答えた。
「千早は源氏名で、彼女の本名が『とは(とわ)』だった」(ウイキぺディアより)

玉縁硯箱「からくれない」172,800円

雪折れ

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今朝、雪が降った。2月の中旬だから何の珍しいこともないのだが、14日に終わった「雪燈籠まつり」では雨が降ったくらい、暖かな日が続いていたいたので、久しぶりの雪掻き仕事である。
昔、山陰の松江に冬に行ったことがあった。結構な降雪があり、立派な孟宗竹が雪の重みに耐えかねて何本も折れているの目の当たりにした。竹に雪折れ無しとか聞いた覚えがあったが、あれは京都あたりの雅な雪の話であったかと、唖然としたことがあった。
弘前は松江に比べればはるかに豪雪地帯だが、津軽塗資料館の前の笹竹はその心配はない。

閑話休題

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津軽地方のある建設会社で、年配の男性が面接を受けに来た時の話だそうな。
「趣味は何ですか?」
「シュミてば?何だべ?」
「えーと、好きなものは?」
「熱っつママさ筋子だな」
今朝は久しぶりに筋子だったので思い出してしまった。
津軽塗に全然関係ない話だが、津軽にはこんな小話が多い。

 

中国人観光客侮れず

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お客様が4人入ってきた。夫婦2組らしい。話しているのは日本語じゃない中国語のようだ。しばらく店内を見回った後に絵葉書を購入。切手も。国際郵便だから70円切手を2枚。しっかりした日本語を話す。お昼に近くで食べるところを尋ねられたので、「高砂」を紹介した。弘前で一番のそば屋だと申し添えて。ところが帰ってきた言葉は・・・
「月曜日だから休みです」
何と!そこまで調べ済みであった。負うた子に教えられて浅瀬を渡るではないが、中国人に高砂の休日を教えられるとは思わなかった。それではと「レストラン山崎」を紹介する。調査の範囲内だったようで、そこに行くことになった。外に出てご案内をして「再見(ツァイチェン)」と言うとニッコリしてくれた。

カイゼン

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真ん中にある黒い棒は津軽塗の箸である。これを研ぐところなのだが、箸が専用の台座に乗っている。初めて見た。聞けばS工房長が工夫して作った物だという。
普通は単なる平らな台の上に箸を乗せて、動かないように左手で抑えて右手で砥石を当てて研ぐのだが、それでは1日中やっていれば腱鞘炎になるほど手がつかれてしまうという。この台座に乗せればずれなくて効率が良いのだという。Sさんは元々大工だった人でこういう物を作るのはお手のものだが、こんな風にして箸を研いでいる職人は居ないのではないか。日本のものづくりの原点を見たように思う。