資料館の入口に

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津軽塗資料館の入り口に古風な壺がある。故村上善男先生が自宅にあるよりここに置いた方が似合うから、傘立てに使えばいいと自らデザインした資料館に寄贈してくれたものだ。竹を透かし籠のように編んだ壺は、雰囲気が確かにピッタリなのだが、はて、元々は何に使った物だろう。朝鮮の物と聞いた覚えがあるが、銘や用途は聞かなかった。村上先生は結構、骨董屋巡りが好きで、自分の美意識にかなった物は身辺に置いていた。京都で骨董屋を紹介されたこともあった。
どなたか御存じの方がいれば、教えて下さい。

寿々喜塗の急須台

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急須台の真ん中に穴が開いてある。この穴は何のためにあるのか、お分かりだろうか。もう知っている人の方が少ないのかもしれない。少し昔話をしよう。
襖を開けると、畳の部屋の真ん中に火鉢が据えてある。これで火をおこし暖を取る。さらに薬缶を掛けて湯を沸かしお茶を飲むのだ。火鉢の脇には炭籠が置いてある。炭籠には炭が入っていて、火箸が刺してある。この火箸の頭の所に急須台を掛けたのだ。そのために穴が必要であったのだ。今はもう昔の話になった。
(直径105mm 4,644円)

不易流行

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店の中央に鎮座しているのはリンゴの樹である。太さからいってかなりの年数を経た樹だ。店内に置かれるようなってからでも30年くらいは経っている。昔は「手あぶり火鉢」として使われていた。底光りしているが塗料等は塗っていない。十数年前に定年退職したが、M店長が毎朝、ワックスで磨いていたのを思い出す。
久しぶりに再訪されたお客様に話しかけられたことがある。2階の畳敷きの腰掛に「御自由にお休みください」と掲げた札を見て、十何年前と変わっていないと言われた。変化や進歩が無いのを指摘されたのかと思ったが、そうではなくて懐かしさのあまりの言葉だった。
そういえば「相変わりませず」というのはいい言葉だと思うようになったのは、いつのころからだったろう。

村上善男の言葉展⑰

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「天から難病をいただき、ようやく私も真の芸術家に近づきつつあります」

2004年6月15日の手紙より。村上先生はすでにALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹っていた。ALSには治療法が無い。

長い間お付き合いいただきましてありがとうございます。「村上善男の言葉展」の紹介はこれで終わりです。展覧会の方は明日26日が最終日となります。最終日は午後5:00までとなります。

村上善男の言葉展⑯

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「まず自分の絵を一番目立たないところに置けばいいんです」

グループ展での陳列の話。陳列は村上に任せておけば大丈夫という位、若い頃から実績があったという。売約済みの意味で赤い待針を刺す習慣も村上先生が始めたと聞いた。

村上善男の言葉展⑮

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「干し餅を見て泣くことができるんです」

理由は聞けなかった。常盤村出身の祖母・サヨの思い出につながるらしい。黒石市出身の義母・松田佐サダによく干し餅を送っていた。藁で器用につながれたひとさげを昔ながらの味と形だ喜んでくれたという。

村上善男の言葉展⑭

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「美術を志す者は文学部へ入るべきです」

郷土料理「しまや」の座敷で。詩人・橡木弘の別名を持つ村上先生ならではの持論。弘前大学の学生に〈宮澤賢治の童話を読んで、その童話の一場面を絵に描く〉という課題を出していた。

画像はご存じ釘打圖シリーズだが『北奥見聞録』 鎌田紳爾著 のカバーにと村上先生が勧めたもの。

村上善男の言葉展⑬

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「絵は日中の光の中で描かなければいけない」

弘前大学の学生の中でもこの言葉が一番印象に残っているという人が少なくないという。村上先生の授業は朝1コマ目が多かった。8時40分始まりにもかかわらず人気があって教室は多くの学生で埋まった。

画像は『津軽ノ赤倉圏大石神社包囲釘打圖』(1996年8月9日)今展覧会のメインとなる作品である。

村上善男の言葉展⑫

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「恐山には一回行って見た方がいい。それも晩秋に、出来れば一生を伴にする人と」

恐山ではいたるところに小石の山が積み上げられている。その写真を全面に出したポスターを村上先生はデザインしたことがある。(現代野外彫刻展・1988)賽の河原に小石を積む無心の子供の話は、人生そのものではないかという。

村上善男の言葉展⑪

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「個展は戦場だ」

個展会場で村上先生に長話をした教え子に言った。軽く会釈をしてくれるだけで、君たちの気持ちは分かっているからと。

画像は村上先生がデザインした立体作品『四隅に四つの林檎』。制作は田中屋工房で木地に紋紗塗が施されたもの。